【採用担当のボヤキ】いくら人材難でも、誰でもいい訳ではないです

超売り手市場

人事担当歴約17年のジンコーです。

昨秋(2023年秋ごろ)ぐらいからでしょうか、首都圏は人材難が深刻になっています。感覚的には、間違いなくリーマンショック以降では一番の、恐らくはバブル崩壊後では最大の売り手市場=求職者優位の労働市場になっています。実際、採用企業側が毎月のようにどんどん条件を、特に給与水準を上げており、正に「賃上げ合戦」の様相と言っても過言ではありません。

とりわけ、しっかりとした実力、実績がある人、例えば上場企業で必要とされる経理実務を一通り経験している、新規事業の立ち上げに成功したことがある、部署マネジメント経験がある、というような方は、転職サイトやエージェントに登録するだけで、沢山のスカウトが舞い込み、エージェントからは求人の紹介があることでしょう。

欧米に比べると流動化が乏しい、言い方を変えると、成長産業に有能な人材が集まりにくいと言われる日本の労働市場ですが、それが少しづつ変わってきているのかもしれません。転職を検討している人、特に年収アップを狙いたい方にとっては、今が大チャンスです!

採用担当受難の時代

そんな状況ですので採用する企業側は、従前と比べると給与水準を上げたり、また間口を広げるために募集要項の必須要件、人柄も含めたその他の基準を引き下げることを余儀なくされています。

給与水準については、どうしても人を補充したければ、既存の社員より高い給与を払わないといけなくなることも多いです。これはこれで社内のバランスや、もっと言えば雰囲気に問題が生じることがあります。長きに渡って会社に貢献してきた社員よりも、実力が未知数な転職者により多くの報酬を払うことになると、既存の社員は当然、いい気がしません。実際、明らかに既存の社員よりも実力が落ちる人に、既存の社員と同等以上の報酬を提示せざるを得ない、というケースは、多くの同業者(採用担当)から耳にします。これに関しては、評価制度がしっかりしていれば、年数が経過すると修練していき、是正されますので、人事責任者としては「まあ今は致し方ない、長い目で見れば落ち着くところに落ち着く」というように捉えています。

採用担当であり人事担当がより苦悩しているのは、経営から「間口を広げろ!」という指示の下、従前より要件を下げざるを得ないことです。そうしないと、そもそも応募がなくなったりで母集団形成ができず、そうなると勿論面接もなかなかできませんし、採用にも至りません。

自社に必要な人員を補充するのが採用担当の役割ですので、私も経営の指示通り、間口を広げて募集をしています。具体的には、半年前なら多分、書類選考でお見送りにしていたであろう方も、一縷の望みを託して「一度お会いさせてください」ということで、面接や面談を実施しています。今は殆どの企業がそうしていると思います。

で、お会いしてみると1割ぐらいは「おっ、想像していたよりいい人だった!」となるのですが、逆にいうと8割は「うーん、やっぱり微妙だな・・・」という結果になり、1割ぐらいは「なんだコイツ、ウチの会社をナメてんのか?」というような、社会人としてなってない残念な方もいます。(ホームページすら見てなかったり、web面接とはいえTシャツやパーカーで臨んだり・・・)

いくら人材難でも、誰でも良い訳ではない

上記の通り、転職を考えている人にとっては転職して年収アップや、働き方の改善が期待できる最高の環境だと思います。一方で採用担当者にとっては非常に厳しい、受難の時代です。

とはいえ、採用だけでなく、長く人事全般を経験している者としては、「誰でも良い訳じゃない! 妥協して人を採用するとロクなことにならない!」と強く思っています。特に価値観が会社と合わない人、もっと言えば、他者に敬意を払わず、やたらと攻撃的であったり、必要なコミュニケーションを取らなかったり、異常にプライドが高かったりするような、人間性に難がある人は、会社にとってネガティブな、マイナスの影響を与えることが多いです。

ふさわしい実力がない人に地位を与えると、皆が不幸になる

そして、その人の本当の実力を超えた報酬やポジションを与えることは、会社のためにもならず、本人のためにもならず、すなわち誰のためにもならない不幸な結果になります。これも私自身の経験的に断言できますし、他社の採用担当や経営者からもよく聞く話です。

例えば、本来は課長の実力、経験がない人を、課長として採用してしまったとします。採用された側は、肩書とそれなりの報酬が手にできて、最初はいいのかもしれません。しかし課長に必要とされる実力がないと、まず部下が非常に苦しくなります。能力のない上司に仕えるのって仕事がやりにくくて、シンドいですよね。そして 「あんな奴が上司なのか」「なんであいつが自分より上席で、給料も高いんだ」というような不満を持つようにもなります。また課長ともなれば、縦の関係(部下だけでなく、上司とも)をうまくやらないといけませんし、横の関係(他部署や他の課長クラス)も、必要な情報共有であったり連携したりすることも求められます。これらが上手くできない課長がいると、会社組織として不具合が生じます。そうなると、本人も苦しいでしょうし、上司も部下も、関係する他の部署も、みんなにとってよくないわけです。

経営者は勿論、人事担当も会社としての全体最適を常に考えています。個人最適ではありません。実力が伴わない人を採用したり、昇格させてしまい、その結果、会社全体が上手く回らないのであれば、当該の社員にはそのポジションから降りていただかないといけなくなります。私の経験では、降ろされた方は大半が自らお辞めになられます。(定年まであと数年の方は、それまで会社にしがみつくこともありますが。)

まとまりのない「まとめ」

かなり話がそれてしまいました。年収アップや働き方の改善を求めて転職活動をされるのは、大変結構なことです。繰り返しですが、今はその大チャンスです。

ですが、あまり高望みをし過ぎるのも考えものだと思います。特に管理職経験のない人が管理職ポジションに応募するというような、自分ができるかどうか未知数な求人に応募することは、応募する側にもリスクが伴いますので、よくお考えになった方がよろしいかと思います。

特に求められる経験値については、経験があり今の自分で充分できるか、もう少し上ぐらいまでにしておくことをお薦めします。例えば過去に5人の部下マネジメント経験がある方が、部下が5人までの管理職ポジションは他社でも勤まるでしょうし、少し増えて7~10人を管理するポジションに応募することは問題ないでしょう。

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